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ウラゲツ☆ブログ
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2020年 12月 31日
月曜社最新情報まとめ(ブログの最新エントリーは当記事の次からです)
◆公式ウェブサイト・オリジナルコンテンツ
◎2011年6月28日~:ルソー「 化学教程 」翻訳プロジェクト。

◆最新刊(書籍の発売日は、取次への搬入日であり、書店店頭発売日ではありません)
◎2020年6月23日発売:中井亜佐子『 〈わたしたち〉の到来 【2020大感謝セール】!コーヒーサーバー 3.8L ドリンクディスペンサー ドライフルーツメーカー 保温 キッチンエイド ステンレス 高さ55cm Stainless FETCO D448 Thermal Dispenser, Stainless Steel, 1.0 gal 家電:アルファエスパス店【送料無料】【本物品質の】!!』本体2,000円
◎2020年3月20日発売:井岡詩子『 ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」 』本体3,500円、シリーズ・古典転生、第22回配本(本巻21)。
◎2020年3月17日発売:エルンスト・ユンガー『 エウメスヴィル 』本体3,500円、叢書エクリチュールの冒険、第16回配本。
◎2020年3月2日発売:土橋茂樹編『 存在論の再検討 』本体4,500円、シリーズ・古典転生、第21回配本(本巻20)。
◎2020年2月6日発売:『 西野達完全ガイドブック 』本体2,700円。
◎2020年1月22日発売:ロドルフ・ガシェ『 脱構築の力 』本体2,700円、叢書エクリチュールの冒険、第15回配本。
 

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星野太氏書評(「artscapeレビュー」 2020年2月11日付
◎2020年1月17日発売:秋元康隆『 意志の倫理学 』本体2,100円、シリーズ〈哲学への扉〉、第6回配本。
◎2019年12月24日発売:ジュディス・バトラー『 新版 権力の心的な生 』本体3,200円。
◎2019年12月5日発売:『 森山大道写真集成(3)写真よさようなら 』本体7,500円。
◎2019年11月29日発売:榊貴美作品集『 kimi sakaki twinkle 』本体2,000円。
◎2019年11月13日発売:カール・ヤスパース『 ニーチェ 』本体8,400円、シリーズ・古典転生、第20回配本(本巻19)。
 山下真氏書評「全体主義による簒奪からニーチェを取り返す、秘かな思想的抵抗――誰もが自由にニーチェに向き合い、交わりを遂行し得る多源性の空間としてニーチェを現前させる〈メタ・ニーチェ論〉」(「図書新聞」2020年2月22日号書評特集「さらなる現代思想の大海へーー新しい思想史の海図をえがくための三冊」)
◎2019年11月1日発売:ラシード・ブージェドラ『 ジブラルタルの征服 』本体3,000円、叢書・エクリチュールの冒険、第14回配本。
 福田育弘氏書評「極小の物語による極大の主観性――現実とはなにかをわたしたちに考えさせる力を持っている作品」(「図書新聞」2020年1月25日号)
 福嶋伸洋氏書評「 救済の隘路を探す〈歴史〉の営み――独立戦争時のアルジェリアを舞台に、奇妙なまでの堂々巡りが展開される螺旋の物語 」(「週刊読書人」2020年2月14日号)
◎2019年10月3日発売:ジョルジョ・アガンベン『 書斎の自画像 』本体2,700円、シリーズ〈哲学への扉〉、第5回配本。
 西山雄二氏書評「 独特かつ魅力的な自伝――多種多様な知的交流を回想しつつ、みずからの生涯を綴る 」(「週刊読書人」2020年1月3日号)
 鈴木慎二氏短評「19年下半期読書アンケート」(「図書新聞」2019年12月21日号)
 長谷正人氏短評(月刊誌「みすず」2020年1/2月合併号「読書アンケート特集」)
 田中純氏短評(月刊誌「みすず」2020年1/2月合併号「読書アンケート特集」)
◎2019年10月3日発売:水野浩二『 倫理と歴史 』本体2,200円、シリーズ〈哲学への扉〉、第4回配本。
 増田靖彦氏書評「道標を打ち込むサルトル――サルトル倫理学のありえたであろう全貌に迫る」(「図書新聞」2020年2月22日号書評特集「さらなる現代思想の大海へーー新しい思想史の海図をえがくための三冊」)

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◎2019年9月19日発売:『 森山大道写真集成(2)狩人 』本体5,000円。
◎2019年9月12日発売:山下純照/西洋比較演劇研究会編『 西洋演劇論アンソロジー 』本体3,600円。
◎2019年8月7日発売:久保明教『 ブルーノ・ラトゥールの取説 』本体1,800円、シリーズ〈哲学への扉〉、第3回配本。
◎2019年8月7日発売:新井俊春『 名人農家が教える有機栽培の技術 』本体2,700円。

◆重版情報
◎2019年5月10日:甲斐義明編訳『 写真の理論 』2刷。
◎2019年7月26日:ロザリンド・e・クラウス『 視覚的無意識 』2刷。
◎2019年9月4日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』2刷。
◎2019年10月10日:森山大道『犬と網タイツ』3刷。
◎2020年1月10日:久保明教『ブルーノ・ラトゥールの取説』3刷。

◆販売情報(重版・品切・サイン本、等々)
◎品切重版検討中:『ミクロコスモス第1集』2刷、ユンガー『パリ日記』2刷、ギルロイ『ブラック・アトランティック』4刷、ブルワー=リットン『来るべき種族』。
◎品切重版未定:『舞台芸術05』『舞台芸術08』『表象01』『表象02』『表象03』『表象04』『表象05』『表象08』『表象09』『表象12』、毛利嘉孝『文化=政治』、クリフォード『ルーツ』、スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』、ハーマッハー『他自律』、ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』、バトラー『自分自身を説明すること』、クラウス+ボワ『アンフォルム』、ブランショ『書物の不在 初版朱色本』『書物の不在 第二版鉄色本』『謎の男トマ 初版本』、片山廣子『燈火節:随筆小説集成』『新編燈火節』、竹内てるよ『静かなる夜明け』、高柳昌行『汎音楽論集』、大里俊晴『マイナー音楽のために』『ガセネタの荒野』、大竹伸朗『ネオンと絵具箱』、森山大道写真集『新宿』『新宿+』『大阪+』『オン・ザ・ロード』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『モノクローム』、森山大道フォトボックス『novembre』、中平卓馬『都市 風景 図鑑』、やなぎみわ作品集『white casket』、川田喜久治写真集『地図』、遠藤水城編『曽根裕|perfect moment』、『猪瀬光全作品』、佐野方美写真集『slash』、熊木裕高写真集『吠えない犬』、瀬戸正人写真集『picnic』、菱田雄介写真集『ある日、』。※書店からの返品で在庫がまれに生じる場合があります。直接、弊社までお電話かメールなどでお尋ね下さい。

◆出版=書店業界情報:リンクまとめ
◎業界紙系:「 新文化 ニュースフラッシュ 」「 文化通信
◎一般紙系:yahoo!ニュース「 出版業界 」「 電子書籍 」「 アマゾン
◎話題系:フレッシュアイニュース「 出版不況 」「 電子書籍 」「 書店経営
◎新刊書店系: 日書連 全国書店新聞
◎雑談&裏話: 5ちゃんねる 一般書籍

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# by urag | 2020-12-31 23:59 | ご挨拶 | comments(21)
2020年 07月 29日
「図書新聞」に中井亜佐子『〈わたしたち〉の到来』の短評
「図書新聞」2020年7月25日付 3457号 の「2020年上半期読書アンケート」にて、巽孝之さんに、3冊のうちの1冊として弊社6月刊の中井亜佐子『 〈わたしたち〉の到来――英語圏モダニズムにおける歴史叙述とマニフェスト 』を選んでいただきました。「モダニズム作家コンラッドとポストコロニアリズム思想家サイードに通暁した中井による瀟洒な装丁が印象的な新著」と評していただきました。

# by urag | 2020-07-29 18:00 | 広告・書評 | comments(0)
2020年 07月 26日
注目新刊:カスー=ノゲス『ゲーデルの悪霊たち――論理学と狂気』みすず書房、ほか
注目新刊:カスー=ノゲス『ゲーデルの悪霊たち――論理学と狂気』みすず書房、ほか_a0018105_03243302.jpg


【2020大感謝セール】!コーヒーサーバー 3.8L ドリンクディスペンサー ドライフルーツメーカー 保温 キッチンエイド ステンレス 高さ55cm Stainless FETCO D448 Thermal Dispenser, Stainless Steel, 1.0 gal 家電:アルファエスパス店【送料無料】【本物品質の】!!『 ゲーデルの悪霊たち――論理学と狂気 』ピエール・カスー=ノゲス著、新谷昌宏訳、みすず書房、2020年7月、本体5,500円、四六判上製456頁、isbn978-4-622-08916-2
マルクス 古き神々と新しき謎――失われた革命の理論を求めて 』マイク・デイヴィス著、佐復秀樹訳、明石書店、2020年7月、本体3,200円、4-6判上製392頁、isbn978-4-7503-5040-0
霊的理想主義の人間観――比較思想から思想対決へ 』サルヴェパッリ・ラーダークリシュナン著、山口泰司訳、知泉書館、2020年7月、本体6,000円、新書判上製502頁、isbn978-4-86285-318-9

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★『ゲーデルの悪霊たち』は、フランスの哲学者ピエール・カスー=ノゲス(pierre cassou-noguès, 1971-)による『les démons de gödel : logique et folie』(seuil, 2007)の全訳。訳者あとがきの言葉を借りると本書は「数年にわたって、ゲーデル文書(プリンストン大学図書館に遺贈された大量のメモ・草稿類)に取り組んだ成果」で、「ゲーデルが公にすることのなかった多くの考察が含まれる「ゲーデル文書」を、彼の人的交流、発表された論文、書簡などと照らし合わせることで、ゲーデルの(ゲーデルがその中で生きた)世界を馬び上がらせているが、その世界を著者は(括弧に入れて)《狂気》と呼んでいる」と。

★例えばカスー=ノゲスはこう書いています。「彼〔ゲーデル〕は哲学者は時代精神を怖れなければならないと(これから見ていくように)確信している。だから彼の言うところでは、《私は用心深いので、自分の哲学の最も論争の的になりにくい部分しか公表していない》のである。/しかし私にとっては、ゲーデルの哲学は、彼のいた環境や時代の中でただ独創的であるというばかりではない。それは《狂気》のものなのである。/ゲーデルは《狂気》の人である」(18頁)。ゲーデルは空調の作りだす悪い空気が耐え難いという理由で転居を繰り返し、同様の理由で冷蔵庫も幾度となく買い替え、さらには毒殺されることへの恐怖から食事が困難になり、医師への不信に取りつかれ、死去した際の体重は31キロだったと、カスー=ノゲスは紹介しています。

★「私は、一人の論理学者のそのような《狂気》が何によって成り立っているのかを理解しようと努める」(21頁)。「私に関心があるのは、ゲーデルの《狂気》が彼の哲学的メモの中に表現され、そして論理学に結びつく、その仕方である。彼の生活ぶりよりは、きわめて多くの資料が集められている彼の哲学の中でこそ、ゲーデルの《狂気》、そしてたぶん、一般に狂気とは何かということを捉えるチャンスを得ることができるのである」(21~22頁)。「いくつかのメモの中には、ある幻想的(ゲーデルの言うところでは《神秘的》)哲学の輪郭を読み取ることができ、それは、未完成ではあるが、我々の科学、すなわち論理学や物理学を拡張して(この倫理学者の言葉では《敷衍》して)、そこからあらゆる種類の奇異な観念を飛び出させる、一つのサイエンス・フィクションの体系のようなものとなっている」(22頁)。

★実在論としての数学的プラトニズム、神の存在証明、時間旅行、さらには数学的対象や概念や非物質的存在を知覚する脳内器官で、天使や悪霊、悪魔といった精神的存在との交流をも可能にする、数学的な眼である「松果眼」など、ゲーデル論理学のこれまで一般読者にはなじみの薄かった〈別の顔〉が浮かび上がります。非常に興味深い一書として、日本でも話題を呼ぶのではないかと思われます。ちなみにカスー=ノゲス自身の略歴は次のように特記されています。「フランスの数学者カヴァイエス研究から出発したが、本書以降、意想外の、時に奇怪な設定の、一人称で語られるフィクションによって哲学的・科学思想史的考察を展開していくという独自のスタイルを確立していき、多数の著作を発表している」。未訳のフィクションが多数あるというのも、読者の関心を惹くところではないでしょうか。

★『マルクス 古き神々と新しき謎』は、アメリカの歴史家で都市理論家、政治活動家のマイク・デイヴィス(mike davis, 1946-)による『old gods, new enigmas: marx's lost theory』(verso, 2018)の全訳。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻末解説は宇波彰さんが書かれています。帯文に曰く「非正規労働、自国第一主義、地球温暖化……資本主義が生んだ諸矛盾に『感染爆発』『スラムの惑星』の著者デイヴィスが挑む渾身の論考」と。

★デイヴィスはこう書いています。「歴史は21世紀初頭に、人口の増加と歩調を合わせて職を生み出せず、食料の安定も保証できず、破局的な気候変動に人間の生活環境を適応させることもできない世界経済の中で、完全にひと巡りした。暴虐がわれわれの周りじゅうを取り巻いている」(211頁)。「現在の惨めな政治に任せたら、もちろん、貧困の都市はほとんど間違いなく希望の棺桶となるだろう。われわれがますますノアのように考え始めなければならない理由である。歴史上の巨木のほとんどがすでに切り倒されているから、新しい箱舟は死にもの狂いとなった人類が、反乱を起こした共同体で、剽窃した科学技術で、密輸されたメディアで、反逆の科学で、そして忘れられたユートピアで、手近に見出すような材料で作られる必要があるだろう」(270頁)。

★なお訳者あとがきによれば明石書店ではデイヴィスの2000年末の著書『 late victorian holocausts: el niño famines and the making of the third world 』の訳書が続刊予定であるとのことです。

★『霊的理想主義の人間観』は「知泉学術叢書」の第12弾。インド共和国第2代大統領で哲学者のサルヴェパッリ・ラーダークリシュナン(sarvepalli radhakrishnan, 1888-1975)の主著のひとつである『an idealist view of life』(1932年)の訳書です。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。本書のもととなっているのはオックスフォード大学での講義。現代科学や伝統的宗教、さらにはプラトンからベルクソン、クローチェ、ホワイトヘッドに至る西洋哲学やヴェーダーンタ哲学が論じられ、人間の霊的進化の道が探究されています。ラーダークリシュナンの単独著の訳書にはこれまでに『印度思想の人生観』(金谷熊雄訳、永田文昌堂、1957年)、『宗教における東と西』(金谷熊雄訳、永田文昌堂、1959年)、『 インド仏教思想史 』(三枝充悳/羽矢辰夫訳、大蔵出版、1985年;新装版2001年;新装再版2004年)などがあり、『インド仏教思想史』のみ現在も「版元在庫あり」とのことです。

★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

子供時代 』ナタリー・サロート著、湯原かの子訳、幻戯書房、2020年7月、本体3,800円、四六変形判ソフト上製376頁、isbn978-4-86488-202-6
颱風(タイフーン) 』レンジェル・メニヘールト著、小谷野敦訳、幻戯書房、2020年7月、本体2,800円、四六変形判ソフト上製224頁、isbn978-4-86488-201-9
なぜ彼女は革命家になったのか――叛逆者フロラ・トリスタンの生涯 』ゲルハルト・レオ著、小杉隆芳訳、法政大学出版局、2020年7月、本体3,300円、四六判上製320頁、isbn978-4-588-36420-4
中国伝道四五年――ティモシー・リチャード回想録 』ティモシー・リチャード著、蒲豊彦/倉田明子監訳、東洋文庫、2020年7月、本体3,800円、b5変判上製函入456頁、isbn978-4-582-80903-9

★『子供時代』と『颱風』は、幻戯書房の「ルリユール叢書」の最新刊。奇しくも、ともにユダヤ人作家の作品です。まず『子供時代』は、フランスの「ヌーヴォー・ロマン」を代表する作家ナタリー・サロート(nathalie sarraute, 1900-1999)による自伝的小説『enfance』(gallimard, 1983)の全訳。訳者解説の説明を借りると、サロート自身だと解釈できる「私」と、「内なる声であり分身」である「あなた」との対話形式によって、「物心がつく頃からリセに入学するまでの子供時代の想い出」を描いたもの。サロートの訳書は復刊を除くと、小説『あの彼らの声が……』(菅野昭正訳、中央公論社、1976年;原著1972年)以来、44年ぶりの出版です。現在も新本で手に入る既刊書がないので、書店さんの置き場所としてはロブ=グリエの隣などが無難かと思います。

★『颱風』は、ハンガリーの劇作家レンジェル・メニヘールト(lengyel menyhért, 1880-1974;メルヒオール・レンジェルとも)による1909年作の戯曲『taifun』を、ローレンス・アーヴィングが英訳した『typhoon: a play in four acts』(1913年)を底本として訳出したもの。もとはハンガリー語で書かれたもので、演劇仲間によってドイツ語に訳され、さらにアーヴィングは独訳から英訳。訳者解説によれば「アーヴィングはかなり原作を改修して」いるとのことですが、世界的に有名なのはこの英訳だそうです。ちなみにアーヴィングは同作のロンドン公演に俳優としても参加しています。パリ(ハンガリー語原典ではベルリン)の日本人集団の「愛国的」任務と殺人事件の顛末をめぐるこの物語は、日本でも1915年に帝国劇場で上演されました。その前年には早川雪洲が主演するアメリカ映画『the typhoon』としても公開されています。

★『なぜ彼女は革命家になったのか』は、ゴーギャンの祖母でフランスの社会革命運動家のフロラ・トリスタン(flora tristan, 1803-1844)をめぐる伝記『flora tristan : la révolte d'une paria』(le temps des cerises, 1994)の全訳です。著者のゲルハルト・レオ(gerhard leo, 1923-2009)は、ドイツ生まれのポーランド系ユダヤ人ジャーナリスト。若き日はナチス・ドイツに抗するレジスタンス運動にも関わったといいます。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。図版多数。レオはこう書きます、「今を遡ること150年前、自由なくしては正義に適う新しい社会は成り立ち得ないことを確認した、この慧眼で情熱溢れる民主的な女性の存在は、これからも絶えず私たちの心を捉えて離さないだろう」(267~268頁)。なお訳者の小杉さんはこれまでに、法政大学出版局よりトリスタンの著書『 ロンドン散策 』や『 ペルー旅行記 』の翻訳を上梓されています。

★『中国伝道四五年』は東洋文庫の第903巻。南ウェールズ出身でキリスト教宣教師を長年務めティモシー・リチャード(timothy richard, 1845-1919)の自叙伝で、最晩年の1916年に出版された『forty-five years in china: reminiscences』の全訳。全21章。共監訳者の倉田さんは巻末解説で「生い立ちから始まり、おおむね1914年までの経歴が、ほぼ時系列に沿って語られている。45年間にわたって中国で宣教師として働いたリチャードの記述は臨場感にあふれており、19世紀末から20世紀初めにかけての中国の社会、事件、景色の記録としても、十分読み応えのある作品」と評しておられます。日清戦争については1章が割かれています。東洋文庫の次回配本は10月、『ケブラ・ナガスト』とのこと。エチオピア建国史の初訳かと思われます。



# by urag | 2020-07-26 23:59 | 本のコンシェルジュ | comments(0)
2020年 07月 20日
月曜社8月新刊:デリダ『スクリッブル 付:トール「形象変化」』
月曜社新刊案内【2020年8月:人文書1点】2020年8月12日取次搬入予定

スクリッブル――権力/書くこと
付:パトリック・トール「形象変化(象徴的なものの考古学)」
ジャック・デリダ[著] 大橋完太郎[訳]
月曜社 2020年8月 本体:2,200円 46判(180x130x10mm)並製144頁 isbn: 978-4-86503-099-0 c0010

アマゾン・ジャパンhonya club 、にて予約受付中。

18世紀英国の神学者ウォーバートンによるヒエログリフ論の仏訳書に付された、デリダとトールによる70年代後半の各論考を初めて訳出。エクリチュールの複雑性のうちに、言語における起源の問題を《覆い》の発生として批判的に捉えるデリダ。権力の起源としての解釈学的営為に着目し、歴史と真理との関係にひそむ暴力を問うトール。グラマトロジーの鋭利な挑戦がここに継続される。【叢書エクリチュールの冒険、第17回配本】

「覆いの力のおかげで、代補が地位を奪取する。起源にまつわるあらゆる説明、エクリチュールや神々に関するあらゆる説明、あるいは系譜学的な説明のもつ権力についてのあらゆる説明は、代補による覆いと一般的なクリプトグラフィーのこうした法則に従う。神官がこれらの説明を占有できたのは、ただそれがひとつの神聖な起源からあるものとして受け入れるふりをすることによってのみなのである」(本文より)。

原著:jacques derrida, “scribble” & patrick tort, “transfigurations” in “essai sur les hiéroglyphes des égyptiens” de william warburton, aubier flammarion, paris, 1977.

ジャック・デリダ(jacques derrida, 1930-2004):フランスの哲学者。エコール・ノルマル・シュペリウール(高等師範学校)で哲学史を講じた。1983年に創設された「国際哲学コレージュ」の初代議長。近年の訳書に『ジャック・デリダ講義録』(白水社、2014年~)、『プシュケー』(2巻、岩波書店、2014~2019年)、『有限責任会社』(法政大学出版局、2002年;新装版2020年)などがある。

パトリック・トール(patrick tort, 1952-):パトリック・トール(patrick tort, 1952-):フランスの言語学者、哲学者、科学史家。チャールズ・ダーウィン国際研究所設立者およびディレクター、国立自然史博物館研究員。著書に『俳優についてのパラドクスの起源』『進化論と言語学』『ダーウィンとダーウィニズム』『唯物論とは何か』『供儀の理論』などが多数あるがいずれも未訳。

大橋完太郎(おおはし・かんたろう、1973-):神戸大学大学院人文学研究科准教授。専門は表象文化論、美学・感性論、近現代西洋思想史。著書に『ディドロの唯物論』(法政大学出版局、2011年)など。訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で』(共訳、人文書院、2015年)など。

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# by urag | 2020-07-20 10:17 | 近刊情報 | comments(0)
2020年 07月 19日
注目新刊:グレアム・ハーマン『思弁的実在論入門』人文書院、ほか
注目新刊:グレアム・ハーマン『思弁的実在論入門』人文書院、ほか_a0018105_01071805.jpg


思弁的実在論入門 』グレアム・ハーマン著、上尾真道/森元斎訳、人文書院、2020年7月、本体2,500円、4-6判並製300頁、isbn978-4-409-03109-4
イタリア料理大全――厨房の学とよい食の術 』ペッレグリーノ・アルトゥージ著、工藤裕子監訳、中山エツコ/柱本元彦/中村浩子訳、平凡社、2020年7月、本体8,800円、a5判上製720頁、isbn978-4-582-63222-4
ジョージ・オーウェル――「人間らしさ」への讃歌 』川端康雄著、岩波新書、2020年7月、本体880円、新書判並製286頁、isbn978-4-00-431837-8
人工知能のための哲学塾  未来社会篇――響きあう社会、他者、自己 』三宅陽一郎/大山匠著、bnn新社、2020年7月、本体2,600円、a5判並製452頁、isbn978-4-8025-1185-8
戦後日本、記憶の力学――「継承という断絶」と無難さの政治学 』福間良明著、作品社、2020年7月、本体2,700円、四六判上製344頁、isbn978-4-86182-814-0
朝露の主たち 』ジャック・ルーマン著、松井裕史訳、作品社、2020年7月、本体2,600円、46判上製269頁、isbn978-4-86182-817-1

★『思弁的実在論入門』はまもなく発売。『speculative realism: an introduction』(polity, 2018)の訳書。米国の哲学者グレアム・ハーマン(graham harman, 1968-)による著書『 四方対象――オブジェクト指向存在論入門 』(岡嶋隆佑ほか訳、人文書院、2017年;原著『the quadruple object』2011年)、『 非唯物論――オブジェクトと社会理論 』(上野俊哉訳、河出書房新社、2019年;原著『immaterialism: objects and social theory』2016年)に続く、3つめの訳書です。

★訳者あとがきに曰く、本書は「この〔思弁的実在論の〕潮流の原点と言うべき2007年4月27日のゴールドスミス・ワークショプを振り返った上で、そこに集った彼〔ハーマン〕を含む4名の哲学者の基本的着想を、主著および最近の思想的発展に基づいてつぶさに解説したもの」。4名というのは、レイ・ブラシエ(第一章「プロメテウス主義」)、イアン・ハミルトン・グラント(第二章「生気論的観念論」)、グレアム・ハーマン(第三章「対象志向存在論」)、カンタン・メイヤスー(第四章「思弁的唯物論」)のこと。ハーマンは巻頭の「はじめに」でこう書いています。「私はメイヤスーとooo〔対象思考存在論〕とが対極に位置し、またブラシエとグラントが対極に位置すると主張したい」(16頁)。

★またこうも書いています。「思弁的実在論なんてものが本当にあるのか。あるとしたら、それは何か新しいものなのだろうか。この問いの一方ないし両方に対して、多くの批判者が「いいえ」と答えようとしてきた。しかし私の見立てでは、答えは、はっきり両方ともに「はい」である。実在論から出発しよう。この言葉は人によってさまざまなことを意味するが、哲学でふつうに言われる意味は比較的はっきりしている。つまり実在論者とは、人間の心とは独立した世界が在ることに賭ける人々だ。実在論を否定する簡単なやり方は、その反対の立場つまり観念論を採用することである。観念論にとって、実在は心と独立ではない。〔…たとえば〕バークリにとって「存在することとは知覚されること」である」(11頁)。

★「私の見るところ、ゴールドスミス・ワークショプで公けになった4つの立場は、依然、今日の哲学的地勢に見出されるもっとも興味深い方向性のうちの4つである。しかしどんな哲学も、別のものに反駁されたり、さらに先へ進むものが出てきたりするまでは、本当のところで理解されてはいない。私は特に、この本を読むもっと若い世代の読者に向けて挑戦状を送りたい。これら思弁的実在論の異なる4派の要点をまず自分のものにしたうえで、いつかさらに先へ進んで欲しいと思う」(273頁)。

★思弁的実在論はメイヤスー『 有限性の後で 』(千葉雅也ほか訳、人文書院、2016年)のヒット以後、関連書がじわじわと増えています。すでに哲学書売場でコーナーを作っている書店さんも多いかと思います。思弁的実在論をめぐる概説書としてはすでに、スティーヴン・シャヴィロ『 モノたちの宇宙――思弁的実在論とは何か 』(上野俊哉訳、河出書房新社、2016年;原著『the universe of things: on speculative realism』2014年)が4年前に出ており、メイヤスー、ハーマン、ブラシエらが紹介されていました。また先月も文理閣より、河野勝彦『 実在論の新展開 』が刊行されており、メイヤスーやハーマンのほか、ロイ・バスカー、マウリツィオ・フェラーリス、マルクス・ガブリエル、などが俎上に載せられています。

★ガブリエルは日本でもベストセラーとなっているので、思弁的実在論のコーナーがなくても彼の本を置いておられる本屋さんは多いかと思います。ぜひこの機会にガブリエルからさらに関連書を拡張し、思弁的実在論をまとめてみることをお薦めします。未訳のブラシエやグラントの訳書もいずれ出版されることと思います。

★『イタリア料理大全』はイタリアの実業家で作家のペッレグリーノ・アルトゥージ(pellegrino artusi, 1820-1911)が1891年に刊行し、死去するまでの20年間にわたり第15版まで増補改訂を繰り返した名著『la scienza in cucina e l'arte di mangiar bene』の初訳。編集担当は去る2月に逝去した松井純氏。底本は1911年の第15版ですが、日本語版への序文として、カーザ・アルトゥージ財団学術顧問の料理史家アルベルト・カパッティ、同財団理事長のライラ・テントーニの2氏がそれぞれ「日本語版への序文」を寄せています。監訳者あとがきによれば、本書は「イタリアの出版史上、記録的ロングセラーのひとつ」で、「イタリアの家庭には必ず1冊はあると言われ、また、イタリア移民とともにアメリカ大陸にも持ち込まれ、広がった」もの。790ものレシピが収録されています。2020年はアルトゥージ生誕200年とのこと。

★『ジョージ・オーウェル』はカバーソデ紹介文に曰く「ポスト真実の時代に再評価が進む『一九八四年』などの代表作をはじめ、少年時代から晩年までの生涯と作品をたどり、その思想の根源をさぐる」もの。さらにあとがきの文言を借りると「生身のオーウェルに力点を置き、〔…〕彼の生涯の軌跡と著作全般を突き合わせて、彼がなにに怒り、喜び、またなにを守ろうとしたか、そしてその行動原理、思想がいかなるものであったかを立体的に浮かび上がらせる」試みです。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。著者の川端康雄(かわばた・やすお:1955-)さんは日本女子大学文学部教授でご専門は近現代の英国文化、英文学。川端さんによるオーウェルの訳書には『動物農場――おとぎばなし』(岩波文庫、2009年)や『オーウェル評論集』(全4巻、編共訳、平凡社ライブラリー、1995年;新装版2009年)があります。ちなみに2020年はオーウェルの没後70年です。

★『人工知能のための哲学塾  未来社会篇』は、2016年『 人工知能のための哲学塾 』〔西洋哲学篇〕、2018年『 人工知能のための哲学塾 東洋哲学篇 』に続く第3弾。これまではゲームai開発者の三宅陽一郎さんの単独著でしたが、今回の「未来社会篇」は立教大学兼任講師で哲学研究者の大山匠(おおやま・たくみ:1990-)さんとの共著となっています。2018年8月から2019年5月にかけて行われた全6回のセミナーの講演部分を大幅加筆して1冊にまとめたもの。三宅さんの巻頭言によれば本書は「「人工知能を社会の中で形成する」ことを探求する書物」とのこと。第一部「視点〈人工知能から哲学へ〉――哲学を足場に人工知能を築く」が三宅さんのパートで、第二部「視点〈哲学から人工知能へ〉――人工知能を哲学から思考する」が大山さんのパートです。目次詳細や本書の一部立ち読みは書名のリンク先でご覧いただけます。「哲学とは自分で考え、自分で行動することです。しかし、新しく考え、新しく行動するためには、新しい哲学が必要です。本書がその手助けとなれば幸いです」(50頁)。

★『戦後日本、記憶の力学』はプロローグに曰く「おもに2015年以降に雑誌・論集等に発表した個別論文を集め、主として戦後中期から現代にかけての〔戦争の記憶をめぐる〕「継承という断絶」の諸相を描」くもの。「「継承」の営みや欲望のなかで、いかなる「忘却」が生み出されてきたのか」、「いかなる論点が見失われていったのか」「それを生み出した社会的なメカニズムは何なのか」を、「空間の力学――「記憶の場」の構築と齟齬」「文化の力学――ポピュラー文化と死者の情念」「社会の力学――「無難さ」の前景化と現代」の3部構成で検討しています。著者の福間良明(ふくま・よしあき:1969-)さんは立命館大学産業社会学部教授で、ご専門は歴史社会学、メディア史。3年前の著書『 「働く青年」と教養の戦後史――「人生雑誌」と読者のゆくえ 』(筑摩選書、2017年)でサントリー学芸賞を受賞されています。

★『朝露の主たち』は訳者あとがきに曰く「ハイチ文学の父」ジャック・ルーマン(jacques roumain, 1907-1944)の最晩年作にして代表作である『gouverneurs de la rosée』(1944年)の訳書。出稼ぎから帰国した主人公が村の水不足と不和に対峙する顛末を描いた本書は、シャモワゾー/コンフィアンの『クレオールとは何か』(西谷修訳、平凡社、1995年;平凡社ライブラリー、2004年)で「ハイチだけでなくアンティル諸島全体で、1950年代に成人した世代によってバイブルのような作品」と評されているとのこと。ルーマンの単独著の訳書は本書が初めて。今春刊行された『 世界の文学、文学の世界 』(松籟社、2020年3月、100~107頁)では、「上着」という作品が中村隆之さんの翻訳で収録されています。




# by urag | 2020-07-19 23:09 | 本のコンシェルジュ | comments(0)
2020年 07月 16日
ブックツリー「哲学読書室」に三浦隆宏さんの選書リストが追加されました
活動の奇跡――アーレント政治理論と哲学カフェ 』(法政大学出版局、2020年6月)の著者、三浦隆宏さんによるコメント付き選書リスト「 哲学カフェには考えるに値する論点があるか? 」が、オンライン書店「honto」のブックツリー「哲学読書室」にて公開開始となりました。

◎哲学読書室
1)星野太(ほしの・ふとし:1983-)さん選書「 崇高が分かれば西洋が分かる
2)國分功一郎(こくぶん・こういちろう:1974-)さん選書「 意志について考える。そこから中動態の哲学へ!
3)近藤和敬(こんどう・かずのり:1979-)さん選書「 20世紀フランスの哲学地図を書き換える
4)上尾真道(うえお・まさみち:1979-)さん選書「 心のケアを問う哲学。精神医療とフランス現代思想
5)篠原雅武(しのはら・まさたけ:1975-)さん選書「 じつは私たちは、様々な人と会話しながら考えている
6)渡辺洋平(わたなべ・ようへい:1985-)さん選書「 今、哲学を(再)開始するために
7)西兼志(にし・けんじ:1972-)さん選書「 〈アイドル〉を通してメディア文化を考える
8)岡本健(おかもと・たけし:1983-)さん選書「 ゾンビを/で哲学してみる!?
10)藤井俊之(ふじい・としゆき:1979-)さん選書「 ナルシシズムの時代に自らを省みることの困難について
11)吉松覚(よしまつ・さとる:1987-)さん選書「 ラディカル無神論をめぐる思想的布置
12)高桑和巳(たかくわ・かずみ:1972-)さん選書「 死刑を考えなおす、何度でも
13)杉田俊介(すぎた・しゅんすけ:1975-)さん選書「 運命論から『ジョジョの奇妙な冒険』を読む
14)河野真太郎(こうの・しんたろう:1974-)さん選書「 労働のいまと〈戦闘美少女〉の現在
15)岡嶋隆佑(おかじま・りゅうすけ:1987-)さん選書「 「実在」とは何か:21世紀哲学の諸潮流
16)吉田奈緒子(よしだ・なおこ:1968-)さん選書「 お金に人生を明け渡したくない人へ
17)明石健五(あかし・けんご:1965-)さん選書「 今を生きのびるための読書
18)相澤真一(あいざわ・しんいち:1979-)さん/磯直樹(いそ・なおき:1979-)さん選書「 現代イギリスの文化と不平等を明視する
19)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん/洪貴義(ほん・きうい:1965-)さん選書「 反時代的〈人文学〉のススメ
20)権安理(ごん・あんり:1971-)さん選書「 そしてもう一度、公共(性)を考える!
21)河南瑠莉(かわなみ・るり:1990-)さん選書「 後期資本主義時代の文化を知る。欲望がクリエイティビティを吞みこむとき
22)百木漠(ももき・ばく:1982-)さん選書「 アーレントとマルクスから「労働と全体主義」を考える
23)津崎良典(つざき・よしのり:1977-)さん選書「 哲学書の修辞学のために
24)堀千晶(ほり・ちあき:1981-)さん選書「 批判・暴力・臨床:ドゥルーズから「古典」への漂流
25)坂本尚志(さかもと・たかし:1976-)さん選書「 フランスの哲学教育から教養の今と未来を考える
26)奥野克巳(おくの・かつみ:1962-)さん選書「 文化相対主義を考え直すために多自然主義を知る
27)藤野寛(ふじの・ひろし:1956-)さん選書「 友情という承認の形――アリストテレスと21世紀が出会う
28)市田良彦(いちだ・よしひこ : 1957-)さん選書「 壊れた脳が歪んだ身体を哲学する
29)森茂起(もりしげゆき:1955-)さん選書「 精神分析の辺域への旅:トラウマ・解離・生命・身体
30)荒木優太(あらき・ゆうた:1987-)さん選書「 「偶然」にかけられた魔術を解く
31)小倉拓也(おぐら・たくや:1985-)さん選書「 大文字の「生」ではなく、「人生」の哲学のための五冊
32)渡名喜庸哲(となき・ようてつ:1980-)さん選書「 『ドローンの哲学』からさらに思考を広げるために
33)真柴隆弘(ましば・たかひろ:1963-)さん選書「 aiの危うさと不可能性について考察する5冊
34)福尾匠(ふくお・たくみ:1992-)さん選書「 眼は拘束された光である──ドゥルーズ『シネマ』に反射する5冊
35)的場昭弘(まとば・あきひろ:1952-)さん選書「 マルクス生誕200年:ソ連、中国の呪縛から離れたマルクスを読む。
36)小林えみ(こばやし・えみ:1978-)さん選書「 『nyx』5号をより楽しく読むための5冊
37)小林浩(こばやし・ひろし:1968-)選書「 書架(もしくは頭蓋)の暗闇に巣食うものたち
38)鈴木智之(すずき・ともゆき:1962-)さん選書「 記憶と歴史――過去とのつながりを考えるための5冊
39)山井敏章(やまい・としあき:1954-)さん選書「 資本主義史研究の新たなジンテーゼ?
40)伊藤嘉高(いとう・ひろたか:1980-)さん選書「 なぜ、いま、アクターネットワーク理論なのか
41)早尾貴紀(はやお・たかのり:1973-)さん選書「 映画論で見る表象の権力と対抗文化
42)門林岳史(かどばやし・たけし:1974-)さん選書「 ポストヒューマンに抗して──状況に置かれた知
43)松山洋平(まつやま・ようへい:1984-)さん選書「 イスラムがもっと「わからなく」なる、ナマモノ5選
44)森田裕之(もりた・ひろゆき:1967-)さん選書「 ドゥルーズ『差異と反復』へ、そしてその先へ
45)久保田晃弘 (くぼた・あきひろ:1960-)さん選書「 新たなる思考のためのメタファーはどこにあるのか?
46)亀井大輔(かめい・だいすけ:1973-)さん選書「 「歴史の思考」へと誘う5冊
47)須藤温子(すとう・はるこ:1972-)さん選書「 やわらかな思考、奇想の知へようこそ!
48)斎藤幸平(さいとう・こうへい:1987-)さん選書「 マルクスと環境危機とエコ社会主義
49)木澤佐登志(きざわ・さとし:1988-)さん選書「 いまさら〈近代〉について考えるための5冊
50)筧菜奈子(かけい・ななこ:1986-)さん選書「 抽象絵画を理解するにうってつけの5冊
51)西山雄二(にしやま・ゆうじ:1971-)さん選書「 フランスにおける動物論の展開
52)山下壮起(やました・そうき:1981-)さん選書「 アフリカ的霊性からヒップホップを考える
53)綿野恵太(わたの・けいた:1988-)さん選書「 「ポリティカル・コレクトネス」を再考するための5冊
54)久保明教(くぼ・あきのり:1978-)さん選書「 文系的思考をその根っこから科学技術へと開くために
55)築地正明(つきじ・まさあき:1981-)さん選書「 信仰について考える。ベルクソンとドゥルーズと共に
56)浅野俊哉(あさの・としや:1962-)さん選書「 〈触発〉の意味の広がりに触れる5冊
57)岩野卓司(いわの・たくじ:1959-)さん/赤羽健(あかはね・けん:1991-)さん選書「 贈与論を通してどう資本主義を突き抜けていくか
58)秋元康隆(あきもと・やすたか:1978-)さん選書「 「利他」とは何かを学ぶために
59)宮﨑裕助(みやざき・ゆうすけ:1974-)さん選書「 「死後の生」を考える、永遠の生を希求することなく
60)後藤護(ごとう・まもる:1988-)さん選書「 「ゴシック・カルチャー破門」からのマニエリスム入門
61)大谷崇(おおたに・たかし:1987-)さん選書「 人間はずっと人生を嫌ってきた――古今東西のペシミズム
62)飯盛元章(いいもり・もとあき:1981-)さん選書「 思考を解き放て!
63)長濱一眞(ながはま・かずま:1983-)さん選書「 「日本」と「近代」を考えるのにガッツリ読みたい5冊
64)入江哲朗(いりえてつろう:1988–)さん選書「 アメリカ思想史を日本語で学ぶための5冊
65)福島勲(ふくしま・いさお:1970-)さん選書「 眠る記憶をざわめかせる、ざわめく記憶を眠らせる
66)山本圭(やまもと・けい:1981-)さん選書「 アンタゴニズム(敵対性)と政治について考えるブックリスト
67)横田祐美子(よこた・ゆみこ:1987-)さん選書「 「思考すること」をたえず思考しつづけるために
68)伊藤潤一郎(いとう・じゅんいちろう:1989-)さん選書「 世界の終わりにおいて人間には何ができるのか?
69)井岡詩子(いおか・うたこ:1987‐)さん選書「 おとなの内に残存する子ども/わたしと再び出会う
70)松田智裕(まつだ・ともひろ:1986-)さん選書「 読み、抵抗し、問う
71)篠森ゆりこ(しのもり・ゆりこ:1967-)さん選書「 紙幣の肖像に選ばれたハリエット・タブマンて誰?
72)三浦隆宏(みうら・たかひろ:1975-)さん選書「 哲学カフェには考えるに値する論点があるか?

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# by urag | 2020-07-16 13:35 | 本のコンシェルジュ | comments(0)
2020年 07月 13日
注目新刊および既刊:星川啓慈『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』法蔵館文庫、ほか
注目新刊および既刊:星川啓慈『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』法蔵館文庫、ほか_a0018105_00002831.jpg


増補 宗教者ウィトゲンシュタイン 』星川啓慈著、法蔵館文庫、2020年7月、本体1,000円、文庫判264頁、isbn978-4-8318-2612-1
植物園の世紀――イギリス帝国の植物政策 』川島昭夫著、共和国、2020年7月、本体2,800円、四六変型判上製240頁、isbn978-4-907986-66-7

★『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』は、1990年に法蔵館より刊行された単行本を増補し文庫化したもの。昨年11月に創刊した法蔵館文庫の第5弾です。「はじめに」の文言を借りると「ウィトゲンシュタイン自身の言葉と彼を知る人々の証言を中心にして」「「宗教的人間」として彼を捉え」たもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。増補版では「全体をアップデートした」とのことです。

★新たに発見された二種類の日記『秘密の日記』『哲学宗教日記』(それぞれ訳書あり)をめぐる分析(第4章「『秘密の日記』にみる『論理哲学論考』の基本的性格の成立」、第5章「『哲学宗教日記』にみる「宗教者」ウィトゲンシュタイン」)を加え、それに連動して第2章「第一次世界大戦とトルストイとの出会い」の第1節「戦場のウィトゲンシュタイン」と第3節「『草稿1914-1916』」を大幅に加筆し、さらに神をめぐる沈黙と語りかけとの間の矛盾をめぐる終章「自分が「神に対して」語ることと「神について」他人に語ること」も新たに加わっています。

★法蔵館さんの文庫創刊に見習って、人文書版元も自社文庫レーベルをどんどん作っていけば、文庫売場はもっと豊かに面白くなるのではないでしょうか。

★『植物園の世紀』は、2020年2月に逝去された京都大学名誉教授、川島昭夫(かわしま・あきお)さんの遺著。1989年から1996年にかけて各媒体で発表されてきた「植物園」関連の8本の論考を著者による自選で1冊にまとめたもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻頭の「はじめに」と巻末の「本書について」は、川島ゼミご出身の志村真幸さんがお書きになっています。ちなみに共和国さんでは著者の京都大学退職を記念した論文集『 異端者たちのイギリス 』を刊行しておられます。編者は志村さんです。

★志村さんは「はじめに」で本書をこう紹介しておられます。「植物園は、自然と人間の歴史的な結びつきをあきらかにする格好のテーマです。近代のイギリスと植民地という問題において、植物園がいかに重要な役割をはたしたかが、本書には論じられています」(9頁)。

★このほか、自粛明けにようやく購入できた4月から6月にかけての新刊を列記します。

平等をめざす、バブーフの陰謀 』フィリップ・ブォナローティ著、田中正人訳、法政大学出版局、2020年6月、本体8,200円、四六判上製854頁、isbn978-4-588-01117-7
フランスの自伝――自伝文学の主題と構造〈新装版〉 』フィリップ・ルジュンヌ著、小倉孝誠訳、法政大学出版局、2020年5月、本体3,600円、四六判上製342頁、isbn978-4-588-14057-0
偶発事の存在論――破壊的可塑性についての試論 』カトリーヌ・マラブー著、鈴木智之訳、法政大学出版局、2020年4月、本体2,800円、四六判上製190頁、isbn978-4-588-01116-0
立昇る曙[アウロラ・コンスルジェンス]――中世寓意錬金術絵詞 』大橋喜之訳、八坂書房、2020年6月、本体4,500円、a5判上製400頁、isbn978-4-89694-273-6
近代人の自由と古代人の自由/征服の精神と簒奪 他一篇 』コンスタン著、堤林剣/堤林恵訳、岩波文庫、2020年5月、本体1,010円、文庫判392頁、isbn978-4-00-325252-9
ノヴァセン――〈超知能〉が地球を更新する 』ジェームズ・ラヴロック著、藤原朝子監訳、松島倫明訳、nhk出版、2020年4月、本体1,500円、四六判上製184頁、isbn978-4-14-081815-2

★『平等をめざす、バブーフの陰謀』は『conspiration pour l'égalité dite de babeuf』(2 vols, bruxelles, 1828)の全訳。底本は同1828年に出版された正誤表付の2刷とのことです。著者のフィリップ・ブォナローティ(philippe buonarroti, 1761-1837)はイタリアに生まれ、1793年にフランスに帰化した革命運動家。 「バブーフは処刑されたが、ブォナローティは処刑を免れ、30年後に亡命先で資料・証言を収集し本書を著した。〔…〕裁判などの証拠資料も合わせた全訳」(帯文より)。

★『フランスの自伝〈新装版〉』は、1995年に刊行されたフィリップ・ルジュンヌ(philippe lejeune, 1938-)の『l'autobiographie en france』(armand colin, 1971)の全訳の新装版です。1994年に書かれた長めの「日本語版へのあとがき」は初版に続き本書でも収録されています。11社共同「書物復権」での復刊であり、新装版にあたって内容の変更はないようです。本書の後半は自伝をめぐるアンソロジーになっていて、ルソー以後の様々なテクストが収録されています。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。ルジュンヌは自伝研究・日記研究のスペシャリストで、訳書にはあともう1冊、『自伝契約』(花輪光監訳、水声社、1993年)があります。

★『偶発事の存在論』は『ontologie de l'accident : essai sur la plasticité destructrice』(léo scheer, 2009)の全訳。「本書では、『新たなる傷つきし者』〔河出書房新社、2016年〕で示された「可塑性」の二つの現れ〔構築的可塑性、破壊的可塑性〕を、神経生物学や精神病理学の領域にとどまらず、いくつかの文学作品にまで例をとりながら、人人が経験するさまざまな「変貌〔メタモルフォーズ〕」の局面に広げて考察している。〔…〕一連の変容家庭の分析的記述は、爆発的変形の可能性が私たちの誰の内にもあることを教える」(訳者あとがきより)。

★マラブーはこう書きます。「失業者、ホームレス、ptsdに苦しむ患者、重度の鬱病者、自然災害の犠牲者、こうした人々の全てが、互いに似たような存在となってきた。私が『新たなる傷つきし者』でその相貌を描こうとした、新たな越境的同盟〔インターナショナル〕が生まれようとしている。ジジェクが言うように、心的外傷後の主体の形は、同一性の空虚と放棄というこれまでには見たことのない人間の姿を示しており、それはほとんどのセラピー、とりわけ精神分析の手には負えないのである。/こうした状況のなかで生活すること――だが、つきつめて言えば人間は常にそのような状況のなかにあるのではないだろうか――は、外部の不在の経験に行き着くものであり、それは同時に内部の不在でもある。そこから逃れることは不可能で、ただその場で変貌を遂げるしかない。世界の内も外も存在しない。変化はより一層根源的で、暴力的にならざるをえない。それだけに、必ず〔存在の〕断片化が生じる。主体の主体自身に対する不和が最も亢進した場合、その葛藤が最も深刻な場合には、もはや悲劇的な像すら構成しない。それは逆説的にも、無関心と冷淡さによって特徴づけられるのである」(27~28頁)。

★マラブーの著書は現代人が抱える問題への思考を喚起するもので、その影響範囲は人文書売場にのみ押しとどめられるものではありません。本書を他の様々な売場に展開して様々な読者の手に届けることのできる想像力こそ、明日の書店に求められているものではないか、という予感がします。

★『立昇る曙』は、13世紀から15世紀の間に執筆され17世紀前半に印刷された錬金術書『aurora consurgens』の全訳。トマス・アクイナス作という体裁を取っていますが、実際のところは不明です。訳書では同作の様々な写本や関連書から採った図像をちりばめ、ミーノ・ガブリエレによる図像概説を訳出し、さらに海外のものを含む解説3本を添え、さらに付録としてゾシモスの『力能について』抄訳のほか、『アリスレウスの幻視』『ダスティンの幻視』『三語の書』などが訳出されています。ユングによって見いだされ、フォン・フランツによる註釈が『結合の神秘』原典にカップリングされている伝説の書が日本語で参照できるようになったのは、まさに驚異的というほかありません。

★『近代人の自由と古代人の自由/征服の精神と簒奪 他一篇』は帯文に曰く「専制はなぜ批判されるべきか。小説『アドルフ』で知られるコンスタン〔バンジャマン・コンスタン:benjamin constant, 1767-1830〕の政治論集。ナポレオンを批判し、個人的自由の保障を唱えた近代自由主義の古典」。1819~20年「近代人の自由と古代人の自由」、1814年「征服の精神と簒奪」、1829年「人類の改善可能性(ペルフェクティビリテ)について」を収録。本書とともに、ツヴェタン・トドロフ『バンジャマン・コンスタン――民主主義への情熱』(小野潮訳、法政大学出版局、2003年)をひもときたいです。

★『ノヴァセン』は『novacene: the coming age of hyperintelligence』(allen lane, 2019)の訳書。書名にもなっているノヴァセンというのは、人類が地球を「地質学的にも生態系の面からも改変する能力を獲得した時代」としてのアントロポセン(人新世)を引き継ぐ時代を指した言葉。ラヴロックはアントロポセンを「火の時代」と呼んで批判的に考察し、その時代が生み出したサイボーグ(ラヴロックの定義では電子的生命形態のことで、知能を持った電子的存在)だけが「いまや目前に迫った天文学的危機をガイアが切り抜けるための先導役を果たせる」(111頁)のだ、として積極的に論じています。ラヴロックが思い描くサイボーグの外見は「球体〔スフィア〕」(121頁)だそうです。

★「速さという特性によって、ひとたびaiによる生命が現れれば、それは急速に進化し、今世紀の終わりまでには生物圏の重要な一端を担うだろう。つまり、ノヴァセンの主要な住人は人間とサイボーグということになる。このふたつの種はともに知性をもち、意図をもって行動する。サイボーグは友好的にもなり得るし、敵対的にもなり得る。だが、現在の地球の年齢や状態から、サイボーグはわたしたちと共に動き協働する以外に選択肢はないだろう。未来の世界は、人間やほかの知的種の身勝手なニーズではなく、ガイアの存続を確かなものにするというニーズによって規定されるのだ」(130頁)。

★「もしわたしのガイア仮説が正しく、地球が実際に自己調整システムだとすれば、人間という種がこのまま生き残るかどうかは、サイボーグがガイアを受け入れるかどうかにかかっている。サイボーグは自分たちのためにも、地球を冷却に保つという人間のプロジェクトに加わらなければならないだろう。それに、これを達成するために使えるメカニズムは、有機的生命だということも理解するだろう。人間と機械との戦争が起こったり、単に人間がマシンによって滅ぼされるといったことが起こることはまずないと信じているのはこれが理由だ。つまりわたしたちがルールを課すからではなく、マシンが自らのために、人間という種をコラボレーションの相手として確保しておきたいと思うからだ」(133~134頁)。

★これ以上は引用しない方がいいと思うのですが、こうしたある種楽観的とも思える未来予測の先には「itガイア」への移行と「有機的ガイア」の死、人間の滅亡が予見されてもいます(140頁)。本書のクライマックスは明らかにこのページより後にあります。存外に怖いです。

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# by urag | 2020-07-13 00:00 | 本のコンシェルジュ | comments(0)
2020年 07月 11日
保管:2019年4月~2019年5月既刊情報
◎2019年5月23日発売:『 森山大道写真集成(4)光と影 』本体6,000円。
◎2019年5月14日発売:ジョージ・ラミング『 私の肌の砦のなかで 』本体3,800円、叢書・エクリチュールの冒険、第13回配本。
 中村隆之氏書評「外界を隔つ「私の肌の砦」――カリブ文学を代表する作家の〈原点〉」(「週刊読書人」2019年8月30日号)
◎2019年4月26日発売:『 表象13:ファッション批評の可能性 』本体2,000円。



# by urag | 2020-07-11 18:10 | 販売情報 | comments(0)
2020年 07月 06日
「図書新聞」に井岡詩子『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』の書評
「図書新聞」2020年7月11日付第3455号の特集「ポストコロナ時代を透視する思想」欄において、弊社3月刊、井岡詩子著『ジョルジュ・バタイユにおける芸術と「幼年期」』に対する書評、「バタイユ流芸術擁護論をさらに推し進める――ヘーゲル的な価値観に抗するバタイユの野心的な世界観をあらためて浮き彫りに」が掲載されました。評者は東京都立大学准教授の古永真一さんです。「サドに加えてカフカやベケットというカードを並べてみせる本書の戦略は、人類が到達すべき自己意識へと開く芸術という、ヘーゲル的な価値観に抗するバタイユの野心的な世界観をあらためて浮き彫りにする。バタイユが言わんとした、存在の深いところをまなざす自己意識とは何か、それが芸術といかなる関係にあるのかという問題について考えさせられる一冊である」。

# by urag | 2020-07-06 12:05 | 広告・書評 | comments(0)
2020年 07月 05日
注目新刊:ちくま学芸文庫7月新刊5点、ほか
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★まず最初に、まもなく発売となるちくま学芸文庫の7月新刊5点をご紹介します。

『大元帥 昭和天皇』山田朗著、ちくま学芸文庫、2020年7月、本体1,500円、文庫判464頁、isbn978-4-480-09971-6
『記号論講義――日常生活批判のためのレッスン』石田英敬著、ちくま学芸文庫、2020年7月、本体1,700円、文庫判640頁、isbn978-4-480-09989-1
『資本主義と奴隷制』エリック・ウィリアムズ著、中山毅訳、ちくま学芸文庫、2020年7月、本体1,700円、文庫判512頁、isbn978-4-480-09992-1
『叙任権闘争』オーギュスタン・フリシュ著、野口洋二訳、ちくま学芸文庫、2020年7月、本体1,300円、文庫判400頁、isbn978-4-480-09993-8
『ノーベル賞で読む現代経済学』トーマス・カリアー著、小坂恵理訳、ちくま学芸文庫、2020年7月、本体1,800円、文庫判656頁、isbn978-4-480-09997-6
『数理のめがね』坪井忠二著、ちくま学芸文庫、2020年7月、本体1,200円、文庫判320頁、isbn978-4-480-09995-2

★『大元帥 昭和天皇』は、1994年に新日本出版社より刊行された単行本の文庫化。「〔天皇の戦争責任に対する否定論に〕具体的な史実の提示によって答え、天皇の戦争責任を考えるための確かな素材を提供しようとするもの」(まえがきより、12頁)。「ちくま学芸文庫版あとがき」によれば、「文庫化するにあたり、新日本出版社版の第14刷を定本として、あらためて誤記・誤植を修正した」とのことです。巻末解説は志學館大学教授の茶谷誠一さんによるもの。「今後も昭和天皇の戦争指導について研究する際、本書は必読の書として読み継がれていくことになるであろう」と評価されておられます。戦争への天皇の具体的関わりを赤裸々に検証した本書のインパクトは今なお、様々なことを読者に考えさせるよすがとなるでしょう。

★『記号論講義』は、2003年に東京大学出版会より刊行された『記号の知/メディアの知――日常生活批判のためのレッスン』を文庫化したもの。文庫化にあたり、巻末に「文庫版のための自著解説」が追加されています。「本書は、大きく言えば、メディアを対象とした記号論の書といえます。メディア記号論という分野の本だと言ってもまちがいではない」(600頁)。「今回「記号論講義」と改題したのは、記号論という学問をもういちど21世紀の学問としてきちんと位置づけ直す本としてあらためて広く世に問いたいと考えたからです」(同)。「メディアと知の転換の見取り図をもとに、記号論や記号学と呼ばれた記号の知が20世紀をとおしてどのような知のインターフェイスを作りだしていったのか、その問題系を11章にわたって追い、レッスン形式で人間の意味世界の変容を理解するための方法を説いたもの」(604~605頁)。

★『資本主義と奴隷制』は、凡例によれば「1978年に理論社から刊行された新装版『資本主義と奴隷制――ニグロ史とイギリス経済史』を底本とし、川北稔氏監修のもと訳語を一部改めた」とのことです。川北さんは巻末解説「「周辺」から世界の歴史を見る」を寄せられています。『capitalism & slavery』(the university of north carolina press, 1944)の全訳で、底本には1961年版が使用されています。カヴァー裏紹介文の文言を借りると「奴隷貿易と奴隷制プランテーションによって蓄積された資本こそが、産業革命をもたらしたことを突き止め」た、現代の古典です。本書の新訳には『資本主義と奴隷制――経済史から見た黒人奴隷制の発生と崩壊』(山本伸監訳、明石書店、2004年)がありますが、川北さんは「原著の真意が伝わりにくいところもあるので、このたび、手軽に読めるかたちで、中山訳を上梓することになった」と説明されています。

★『叙任権闘争』は、『la querelle des investitures』(montaigne, 1946)の全訳で、1972年に創文社から初版が刊行され、さらに改訂版が1980年に上梓された単行本の文庫化。書名ともなっている叙任権闘争とは、11世紀後半から12世紀初頭にかけて、聖職者の任命方法をめぐり、教会と王侯貴族との間で起きた争いのこと。「ちくま学芸文庫版訳者あとがき」には「本訳書刊行以降に刊行された主な資料集と参考文献」が追記されています。著者のフリシュ(augustin fliche, 1884-1951)はフランスの歴史家で専門は中世史と教会史。著書の日本語訳は本書が唯一のものとなります。

★『ノーベル賞で読む現代経済学』は、『intellectual capital: forty years of the nobel prize in economics』(cambridge university press, 2010)の全訳で、2014年に筑摩書房の「筑摩選書」の新刊として出版された『ノーベル経済学賞の40年――20世紀経済思想史入門』上下巻の改題合本文庫化。1969年から2009年にかけて受賞した64名が紹介されています。経済学者の瀧澤弘和さんが担当された文庫版解説では、2010年から2019年までの受賞者について「簡単に補足」されています。ビジネスマン必携の1冊として広く薦めたい教養書です。

★『数理のめがね』は、1968年に岩波書店から刊行された単行本の文庫化。著者の坪井忠二(つぼい・ちゅうじ:1902-1982)さんは地震学者で地球物理学者。すでにお亡くなりになっているため、旧版からの本文改訂はないようです。解説も特になし。巻頭のはしがきによれば「日常身辺のことをその〔数理という〕めがねを通してみたらどんなことになるか」をめぐって『数学セミナー』に連載されたエッセイをまとめたもの。続篇が1976年に日本評論社から刊行されていますが、こちらはまだ文庫化されていません。

★続いて人文書院さんの6~7月の新刊より3点について。

感染症社会――アフターコロナの生政治 』美馬達哉著、人文書院、2020年7月、本体2,000円、4-6判並製256頁、isbn9784409041130
マンガ・スタディーズ 』吉村和真/ジャクリーヌ・ベルント編、人文書院、2020年6月、本体1,900円、4-6判並製220頁、isbn978-4-409-00113-4
グノーシスの宗教――異邦の神の福音とキリスト教の端緒 増補版 』ハンス・ヨナス著、秋山さと子/入江良平訳、人文書院、2020年6月、本体7,500円、a5判上製510頁、isbn978-4-409-03111-7

★『感染症社会』は帯文の文言を借りると「医師であり注目の医療社会学者でもある著者が、covid-19に関する医学的知見と発生以来の経緯、そして社会学的分析をふまえ、事態を総合的に捉える迫真の論考」。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。「本書は、人間対ウイルスという二項対立の短絡的な考え方を相対化し、社会現象としてのパンデミックとコロナウイルスの存在との隙間にあるさまざまなコンスティテューションの軋みに耳を澄ませて、思考を積み重ねることを目指している」(11頁)。本書の刊行にあたっての著者コメントと第一章の一部が 無料で公開 されています。

★『マンガ・スタディーズ』は「ブックガイドシリーズ基本の30冊」の約5年ぶりとなる13冊目の新刊。第1部「マンガ/史」、第2部「表現/読者」、第3部「産業/メディア」、第4部「ジェンダー/セクシュアリティ」、第5部「日本/世界」の5部構成で30冊が紹介されています。目次詳細は書名のリンク先でご確認下さい。編者の吉村さん曰く「アカデミズムの枠組みに揺さぶりをかけるようなマンガ研究の問いかけを感じ取っていただきたい」(はじめに、10頁)。

★『グノーシスの宗教 増補版』は、1986年に刊行された訳書(底本は1964年に刊行された第2版)に、英語版第3版(2001年)への序文を訳出して加えた増補版。この序文は注と併せて21頁あり、入江さんによる「増補版への訳者あとがき」では「新しい序文でヨナスは「何が彼をグノーシス主義に導いたのか」という問いに答える形で、心の赴くままに語っていて、興味深い」と評されています。旧版本文には手を入れていないとのことです。著者のハンス・ヨナス(hans jonas, 1903-1993)はドイツの哲学者。主著の『責任という原理――科学技術文明のための倫理学の試み』(加藤尚武監訳、東信堂、2000年;新装版、2010年)が有名ですが、グノーシス研究においても本書『グノーシスの宗教』によって広く知られています。

★最後に河出書房新社さんの6~7月の新刊より3点について。

文藝 2020年秋季号 』河出書房新社、2020年7月、本体1,350円、a5判並製504頁、isbn978-4-309-98013-3
古井由吉――文学の奇蹟 』河出書房新社編集部編、河出書房新社、2020年6月、本体2,200円、a5判並製288頁、isbn978-4-309-02897-2
日本小説批評の起源 』渡部直己著、河出書房新社、2020年6月、本体3,400円、46判上製290頁、isbn978-4-309-02888-0

★『文藝 2020年秋季号』は特集「覚醒するシスターフッド」「非常時の日常 23人の2020年4月-5月」「世界の作家は新型コロナ禍をどう捉えたか」の3本立て。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。リニューアル後の『文藝』は文芸書と人文社会書を近づけてくれる試みに満ちていて、毎号意欲的です。特に今号の第一特集「覚醒するシスターフッド」はフェミニズムの棚でも扱われてほしいところです。また、第二特集と第三特集は、このところ他誌でも取り上げられてきた、コロナ関連のコンテンツにさらなる幅と奥行きを与えてくれます。『現代思想2020年5月号:感染/パンデミック――新型コロナウイルスから考える』『ele-king臨時増刊号:コロナが変えた世界』『思想としての〈新型コロナウイルス禍〉』、さらに『現代思想』では7月末発売の8月号が特集「コロナと暮らし」、8月下旬発売の9月臨時増刊号が総特集「〈危機〉の時代を生きるためのブックガイド」という予定なので、人文書売場においても「新型コロナ」もしくは「ウイルスと人類」をめぐっては継続的なコーナーを作っておいた方が良いと思われます。

★『古井由吉』は2月18日に逝去された作家の古井由吉さんをめぐるアンソロジー。再録ではない今回初掲載のコンテンツとしては、古井睿子さんへのインタヴュー「夫・古井由吉の最後の日々」、松浦寿輝さんと堀江敏幸さんの対談「禍々しき静まりの反復」、石川義正さんの論考「時間の感染」、片岡大右さんの論考「古井由吉の風景のための序説」、築地正明さんの論考「反復する「永遠の今」」など。築地さんは「古井由吉全著作解題」も担当されています。

★『日本小説批評の起源』は、月刊誌「新潮」2019年10月号に掲載された「話芸と書法――『水滸伝』から読む十九世紀日本文学(前編)」に端を発し、書き下ろしを加えて一冊としたもの。「ここで問われようとするのは、まさしく「批評」の即物的な起源、あるいは、即物性そのものが起源となるような場の生動にほかならぬ〔…〕。/その場所に向け、一種考古学的な測鉛をおろすこと。――それが、本書がみずからに与えた大きな課題となる」(序文、10頁)。

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# by urag | 2020-07-05 23:51 | 本のコンシェルジュ | comments(0)


    


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